善光寺法話

第7回 除夜の鐘

まもなく慌ただしい年の瀬になります。大掃除をして旧年の埃を払い、清新な気持ちで新年をお迎えになられる方も多いと思います。

日本の年越しの代表的な風景として先ず思い浮かぶのは除夜の鐘でしょう。一般に、除夜の鐘は108回打つとされています。この108という数は、私たちが過去世・現世・未来世に持つ108の煩悩に由来するといわれています。除夜の鐘は、1つ打つごとに、1つの煩悩を消していきます。仏教ではこの煩悩をなくすことが覚りへの道と考えられています。除夜の鐘には、この鐘の音を聞く人、ひいては全ての人々が仏の覚りへと導かれますように、という願いが込められているのでしょう。

さて、この108という数は善光寺本堂とも深い関係があります。実は、善光寺本堂は108本もの桂などの太い柱で支えられています。この108という数は先ほどの煩悩の数と同じです。すなわち、ご本堂の太い柱で、お参りになる方々の煩悩を打ち消しているとも考えられるのです。108本の柱のうち107本は円柱ですが、1本だけ角柱があります。この柱は本堂内々陣の中央にあり、「守屋柱」と呼ばれています。これは一般の民家の大黒柱に当たるものです。

柱の数に注目してみると、善光寺の建築物は仏教の思想に基づいて建てられたのだということが分かります。除夜の鐘の主役である鐘楼は6本の柱で建っています。これは六字の名号になぞらえたといわれています。六字の名号とは「南無阿弥陀仏」という念仏のことです。毎朝のお朝事の一番の意義は、大導師様からこの「南無阿弥陀仏」というお念仏を授かることにあります。

また、山門(三門)の柱は18本からなっています。阿弥陀如来様は全ての人々を救うために四十八の誓願をお立てになりました。中でも本願といわれるのが第十八願です。この第十八願とは、「南無阿弥陀仏」と念仏を称えた人を極楽浄土へ往生させるというものです。18本の柱の由来は阿弥陀如来様の本願である第十八願にあるのです。

このように、善光寺の建築物は仏教の思想に基づいて建てられています。柱の数と意味に思いを馳せながらお参りいただくと、いつもと違った善光寺参りになるかもしれません。