善光寺法話

第30回 山門から想いを馳せる

 山門とはお寺の正門のことで、古くは寺院の多くが山岳に構えられたことにその名の由来があります。とりわけ山岳とゆかりの深い善光寺山門の歴史は古く、既存のものでも江戸時代中期の寛延三年(1750年)に建立された国の重要文化財です。その高さもおよそ20メートルと見た目にも堂々たる意匠を誇ります。

 山門上部へと向かう急な階段を登ったその先で、智慧を司る文殊菩薩さまをお参りし、平成29年夏から一般開放された回廊から外を見渡せば、いつもとは一味違った風景を望むことができます。

本堂や経蔵の屋根の美しさに改めて息をのみ、今まで目に留まらなかった遠く山々の稜線が私たちを惹きつけます。先ほど抜けてきた賑やかな仲見世の喧騒も嘘のようにちっぽけです。

我々は誰しもが、健やかな生活を送りたいと考え、日々懸命に努力をするものでしょう。しかしそれが故に、時として考えは凝り固まり、心は柔軟さを欠き、気持ちの余裕さえも失ってしまいます。

時には山門の優しいお顔の文殊菩薩さまと伴に、いつもとは違った風景を眺め、想いを馳せてみませんか。素晴らしい見通しの先に、今まで抱えていた自分の内面を見てとれることでしょう。