善光寺法話

第20回 御開帳について〜回向柱とは〜

平成27年4月5日より、数え年で7年に一度の盛儀「善光寺前立本尊御開帳」が執り行われます。前立本尊への思慕の念に動かされ、全国津々浦々より善男善女の皆さまが信州善光寺を目指されます。

この信仰心に応えて下さるものの一つに「回向柱」があります。回向柱は、善光寺本堂の前に建立され、高さ約10m、太さ45センチ四方、重さは3トンにもなります。回向柱は白い紐に結ばれ、それが本堂内で五色の糸に変わり、最終的に前立本尊の右手中指から伸びる金糸と繋がります。これを「善の綱」と呼びます。「善の綱」によって前立本尊と繋がった回向柱は、如来さまの命を宿すとされ、回向柱の一面でも触れるとその善の綱を通して前立本尊に直接触れるのと同じ功徳が得られると言われております。

そもそも回向柱は、「卒塔婆」の一種です。現代において、卒塔婆とは墓石の脇に建てる板塔婆を指すことが多いですが、もともとはお釈迦様の仏舎利(お遺骨)を納めた仏塔(サンスクリット語でストゥーパと言います、卒塔婆はこれの音写)を表す言葉でした。後に如来様の命の象徴とみなされ、形も五重塔のような重層の塔や角塔婆(回向柱はこれに相当します)、板塔婆等へと展開してきました。

回向柱のような角塔婆や板塔婆には、上部に「刻み」が入っています。これは五輪塔をかたどったもので、これは古代インド密教に由来します。仏塔の形が変化する中、古代インドでは宇宙を構成する「空・風・火・水・地」の五つの要素(五大)が、完全な姿で存在する様子を五輪塔で表現するようになりました。

仏教の真理の一つに「諸法実相」という考えがあります。諸法実相とは、宇宙や世界中の諸々の法(ありよう)は、そのまま御仏の真実の相(あるがまま)をあらわしている、ことを意味します。この「全ての有り様をあるがままに見る」ことは中々難しく、仏の智慧があってはじめて認めることができる境涯ですが、回向柱はその宇宙に満ち渡る御仏のお姿や命を表現しています。

 

回向柱の四面には、それぞれ梵字と漢文が善光寺住職である大勧進御貫主によって書き入れられますが、それぞれ

  • 正面:キャ・カ・ラ・バ・ア・”キリク・サ・サク” 奉開龕前立本尊
  •  梵字は、先述しました大宇宙に遍満する如来の命を意味します。またそれを知ることによって、仏道を目指す修行者の悟りへの第一段階目である発心も同時に意味します。
  •  阿弥陀如来を表す「キリク」・観音菩薩の「サ」・勢至菩薩の「サク」を併せて善光寺一光三尊阿弥陀如来様を表す梵字。
  •  前立本尊を開龕(厨子を開く)し奉る。
  • 東面:キャク・カク・ラク・バク・アク 国家豊寧 萬姓快樂 佛日増輝 含霊普潤
  •  梵字は、悟りの完成である涅槃を意味します。
  •  国は豊かに寧(やすん)じ、全ての人々は楽しみ、仏の光は輝きをまし、人類を普く潤す。如来の功徳を表す文。
  • 西面:キャー・カー・ラー・バー・アー 光明遍照 十方世界 念佛衆生 摂取不捨
  •  梵字は修行者の修行段階を意味します。
  •  如来の光明は、遍く十方世界を照らし、念仏の衆生を救われ、お捨てにならない。如来の救済を表す文。
  • 北面:ケン・カン・ラン・バン・アン 維時 平成○年四月○日 一山大衆 敬白
  •  梵字は悟りへ到達する如来の菩提や智慧を表します。
  •  これ時、回向柱建立の日時、一山大衆、敬って白す。

 

と、以上のように善光寺如来のお力を表しております。それぞれ違うことを書かれていますが、一面が全ての面に、そして如来と繋がっているので、一面を触れるだけでお功徳を戴けます。

御開帳期間中、人々が大行列を成しこぞって回向柱に触れて極楽往生を願うのも、回向柱が御開帳の象徴としてのモニュメントとしてではなく、三国伝来の御仏で最古である善光寺如来様の偉大なお功徳にすがりたい一心からなのではないでしょうか。北陸新幹線延伸により、より信州へも足を運びやすくなりました今日このごろ。善男善女の皆さまも是非、7年に一度のこの機会に信州善光寺へお越し頂き、古来より多くの衆生を救済くださった善光寺前立御本尊にご参拝頂きたく申し上げます。その際はどうぞ道中お気をつけてお越しください。

合掌

(常住院徒弟 崇仁)